近年、お産の際に精油を持参して、その香りの中で出産させてもらえる病院が増えてきました。
またそれに伴い、妊婦さん向けのアロマ講座を開催する病院もあります。
私は植物療法を勉強してきたので、興味や学びを深める意味で病院のアロマ講座に参加しようと思いましたが、感染予防のために両親学級も何もかも開催が中止となってしまいました。
そのため病院の講座がどんな内容なのかはあまりわかりませんが、植物療法とアロマ関連の仕事をする中で得た知識、そして何より自分の体験談を元に『精油とお産』について紹介していきます。
なぜ香りがあるといいの?
嗅覚の話
多くの人はある程度の年齢になると視覚優位になります。
しかし、胎児は一番最初に嗅覚の器官が出来上がると言われるほど、実は人間にとって嗅覚は大切です。
生まれたばかりの赤ちゃんは視力が弱く、授乳のときのお母さんとの顔の距離ならば見えるとも言われていますね。
一方、生後しばらく経った頃には自分の母親の母乳とそうではない人の母乳の匂いを嗅ぎ分けることができるということがわかっています。
また、本来体内に入って血液の流れに乗ったものは、毒性のある化学物質等から脳を守るため直接脳へ行かないように選択されるようになっています。
しかし嗅覚は五感の中で唯一、香り成分が直接脳に行くための経路を持っていることがわかっています。
そのため香りを上手く使うことで、意識してもできないような変化を起こすことができるようになると考えられているのです。
お産と香り
私は元々、お産の時に精油を持っていくことは考えていましたが、アロマテラピーの先輩からこんな話を聞きました。
「お産は陣痛と陣痛の間にどれだけリラックスできるかが勝負なの。リラックスして緩むと、赤ちゃんもグッと進めるからね」
陣痛中は苦しいですが、この時赤ちゃんも苦しいのだとお医者さんや助産師さんから説明を受けました。
陣痛の合間には、赤ちゃんに酸素を送るイメージでしっかり深呼吸をして休むようにとも言われました。
そういう意味でも陣痛と陣痛の間にリラックスすることは大事になってくるのです。
おすすめの精油
ここでおすすめしている精油たちは、妊娠中はあまり嗅がない方がいいと言われています。
ただしお産のときには頼もしい味方です。
真正ラベンダー

アロマテラピーに興味のない人でも知っている精油の代表格、ラベンダー。
ラベンダー入りのアロマピローなども売られており「ラベンダー=リラックスの香り」というイメージがありますよね。
私はラベンダー2種類を産院に持っていきました。
手に入るならば野生ラベンダーもおすすめですが、手に入りやすい真正ラベンダーでも◯です。
なお、ラベンダーには何種類かあるので、必ず学名を確認して、
- Lavandula angustifolia
- Lavandula officinalis
- Lavandula vera(野生ラベンダー)
となっているものを使ってくださいね。
ジャスミン
華やかな香りが心地良いジャスミンもお産の時に持っているといいといわれる精油です。
私も大好きな香りですが、ジャスミンの精油を採るときには”溶剤抽出法”という方法を使うことが多いので、どうしても微量の溶剤が残ってしまう心配があります。
残っている溶剤が極微量であれば、植物油に混ぜるときにはさらに濃度が薄くなるのだから気にせず使うという立場の人もいますし、溶剤抽出のものは肌には付けないという立場の人もおり、意見が分かれている状態です。
私自身は『心配なものは使わない』という考えでいるので、どうしても使いたくて信頼できるメーカーさんに出会ったら使うと思いますが、現状は使いたい機会もないので使っていません。
ジャスミンは、精油を抽出するのに大量の花を必要とするため高価な精油の一つです。
そのため、お産のときに香らせるという用途だけではもったいないです。
だから、ジャスミンが好きで自分にしっくりくる精油に出会えたなら、その気持ち大切に、香りを深く吸って楽しんで使ってください。
そういった心の持ちようさえ、体には良い変化をもたらすと思っています。
ローズ
ローズも、アロマテラピーに興味のない人にも広く知られていますね。
バラは世界中に2万種以上ありますが、一般的なローズの精油の原料はダマスクローズです。
ジャスミンと同じく精油は”溶剤抽出法”を用いて抽出します。
ですが、ローズはもう一つ出回っている抽出方法のものがあり、それがローズ・オットーです、
こちらは”水蒸気蒸留法”という方法で抽出されているため、溶剤は心配だけどアロマクラフトは作ってみたいという場合はローズ・オットーがおすすめ。
溶剤抽出法のものはローズ・アブソリュート(Abs.)
水蒸気蒸留法のものはローズ・オットー
ちなみになぜ抽出法が今もなお2つあるのかというと、それぞれメリット・デメリットがあるからです。
水蒸気蒸留法は溶剤を使わない代わりに熱を使います。そうすると熱で壊れてしまう香り成分や蒸留できない成分も出てきてしまうのです。
そのため微妙な違いかもしれませんが、溶剤抽出法の方がよりバラ本来の繊細な香りを持つといわれています。
ローズの精油も、3000kgの薔薇の花弁を使ってやっと1kgの精油が得られるほど希少。
そのため高価です。
クラリセージ
どんな香りかぱっと浮かばないかもしれませんが、甘く少し草っぽさのある香りです。
お店で試しに嗅いでみて、気に入ったら使ってみてください。
お産の時に限らず、女性に嬉しいハーブ。
フランスでは医師の処方のもとで、女性特有の不調の際に飲むこともあります。
(日本では精油は雑貨扱いのため、飲むことを想定して売られていません。飲まないでください)
どうやって香らせればいいの?
病院や産院によってはアロマディフューザーなどで部屋に香らせてくれるところもあるようです。
私のところはそういうものがなかったので、まだ余裕のある段階でハンカチの端に垂らして枕元に置き、陣痛の合間に嗅いでいました。
ティッシュに染み込ませて枕元などに置くのもいいと思います。
【コツ】条件付けしておくのも◯
特に初めての出産だと緊張しますよね。
そんな中で出産当日いきなり精油を嗅ぐのもいいですが、条件付けをしておくのもおすすめです。
精油の紹介のところでも書いたように、お産の時の助けになってくれる精油は妊娠中はあまり嗅がない方がいいと言われています。
しかしいつ生まれてもいい正産期に入ったら別です。
職場でもおすすめされたのですが、リラックスしている時に精油を部屋に香らせる。
これだけです。
そうすると、その香りを嗅ぐこととリラックスが結びつくようになり、お産のときもリラックスしやすくなります。
余裕のある方は試してみてください。
注意点
まず何度も書いていますが、ここで紹介している精油はなるべく妊娠後期や正産期になるまで使わないでください。
でも、嗅いでしまったからといって気に病まなくても大丈夫です。
私はアロマ関係の仕事をしていて、どうしても精油を嗅いでしまうことがありました。
それでも一般的な産休に入る目安の日まで仕事をし、一度不正出血で検査をしに休みをもらっただけで(問題はありませんでした)、あとは普通の妊婦でした。
また精油やハーブに限らず、少しでも心配なものは避けてください。
心配なまま使ってしまう、摂取してしまうと精神衛生上よくないです。
使ったことや摂取したことをくよくよと悩み続けるくらいなら、避けるのがいいです。
でも、もし使ったり飲んだあとになにか気付いても、「次は気をつけよう」くらいの気持ちでいてください。
私の知り合いは妊娠に気付かず飲酒していましたが、無事に元気な子を生みました。
なるべく楽しい気持ちで妊娠期間を過ごしてくださいね!
まとめ
お産の時に使う精油についてみてきました。
あくまでも植物療法士的におすすめの精油というだけなので、一番は自分の好きな精油、落ち着く香りを持ってお産に臨むことがおすすめです。
お母さんが心地良いと赤ちゃんも心地良い気分になるといわれています。
ぜひ、香りをうまく使いながら妊娠期と出産を楽しんでください。
そして、お産の時に力になってくれた香りは、きっと育児中に落ち込んだりストレスが溜まったときにも癒しになってくれると思います。
お気に入りの香りを見つけて上手く生活に取り入れていってくださいね。
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